machio Development Diary

思いつきで技術的なことをつらつらと

初期スタートアップにおける社内文化の在るべき形とは ~3ヶ月開発チームをマネジメントしながら本気で考えた道のり~

はじめに

この記事は6人の小さなチームのマネジメントを3ヶ月齧っただけの僕が、それでも外部のメンターさん方に猛烈に相談に乗っていただいたりしながら 社内文化 について試行錯誤した道のりについて綴っています。拙文ですが温かく見守ってくださると幸いです。

背景

簡単に背景を共有させていただきたいと思います。

僕が3ヶ月間エンジニアのマネージャーを経験したこと

僕が所属している 株式会社Flatt のエンジニアチームは

12月まで 1月以降
実働人数 3人 2倍の6人に
社長の関わり方 手も動かしつつマネジメント 現場を離れて社長業に専念
マネジメント層が不在

というように 2017年 => 2018年 という年の変わり目を境に大きく環境が変わりました。

そこで純エンジニアポジションでは1番の古株だった(それが理由かはわかりませんが)僕がエンジニアのマネージャーに抜擢され、この3ヶ月間 6人のエンジニアチームのマネージャーとしてエンジニアの組織全体を見る経験 をしました。

社内文化に対する考え方の変遷

きっかけになったのはマネージャー就任

当初僕は「マネージャーになると言っても人々のタスクを管理してみんなが働きやすい環境を作ればええんかな?」くらいの甘い認識でいました。

ところが始めてみると驚くことに、1日にしなければいけない意思決定の数が大小合わせて今までの10倍くらいになりました

一介の平エンジニアとして働いていた時は、社長から降りてくる指示に従って、目の前の作業を最大限のパフォーマンスで完遂していれば評価されていました。

マネージャーになると『ユーザーのこと(一番大事!)』『リソース』『期日』『メンバーのモチベーション』などの多くのファクターに思いを馳せながら、テンポよくメンバー全員分の意思決定をしていかなければなりません。

しかしいかに小さなチームとはいえ、この意思決定が一過性のものであったり属人的であったりすると組織全体の脆弱性に繋がります。

そこで僕が意思決定の拠り所としたのが 会社の文化やコアバリューでした(当然の流れだと思います)。

(※ 今後便宜のために『正確な』意思決定という言葉を使いますが、これの意図は打ち手として有効かどうかではなく、組織としての軸に沿っている(つまり一過性がなく属人的でない)という意味です)

社内文化は何のために存在するのか?

社内文化やそれに属するマインドに関する記事を見ていると「個人の成長のため」みたいなメンバー側から見た表面的な切り口で自己啓発のような文脈で語られているものが散見されます。

しかし、個人の成長 / 迅速で正確な意思決定 / コミュニケーションの円滑さ など社内文化の浸透による恩恵は様々ですが、それもひっくるめて社内文化の目的は必ず『長期的な組織の利益の最大化』に帰着します(当たり前のことなんですが)。

『長期的な組織の利益(どう定義するかは組織によります)の最大化』が全ての社内文化の上に存在しており、社内文化はその潤滑油にすぎない という事実を常に念頭に置いておかないと、社内文化はすぐに形骸化してしまいます。

社内文化の形骸化とは

端的に言うと 社内文化の言葉だけが一人歩きして、その本質への理解が疎らになり、結果パフォーマンスの低下に繋がる ことを表現しようとしています。

例えば『自責』という文化があった時に、長期的な組織の利益の最大化を考えると他の人に投げた方がいいトラブルシューティング(その問題について考察し、パフォーマンスを最適化するために他の人にアサインした時点で自責)を、『自責』という言葉の言葉尻だけ捉えて全部自分で抱えた場合、それは本来の目的に適っていないので形骸化していると言えると思います。

これが進行してしまう原因は大きく分けて2つあると思います。

組織の拡大に伴う形骸化

これは規模に応じて避けられなくなってくると思います。

初期のメンバーは特に、その組織に対して並々ならない思いがあります。皆が空気を吸うように「長期的な組織の利益の最大化」を念頭に置いて考え、能動的に行動します。

しかし、規模の拡大に伴って組織全体をマクロに捉える見方は薄れていき、だんだんと部署・チーム・個人のようなミクロな視点が蔓延していきます。

これは当然の動きであり、非難する意図は全くありません。全員が全員、前述のような長期的な組織の利益の最大化を第一に考えられる巨大組織の構成は正直不可能だと思います。

結果として生まれる個人がミクロな見方でバラバラな方向を向いている状態の下で、社内文化の形骸化を防ぐマネジメントはとても難易度が高いと思います。

現に大企業やメガベンチャーに就職した先輩方に企業の文化やコアバリューについてお話を聞くと、「言葉は覚えているが特に深い意味も考えていない人」、「なんとなく小馬鹿にしている人」や「そもそも存在自体を知らない人」がほとんどでした。

認識共有の不足からくる形骸化

前述の通り、組織がかなり大きくなってくると話は変わりますが、今後の組織の在り方を強く定義する存在である経営陣・初期のメンバーについては、この企業文化は高いレベルで正確に共有されていなければなりません

このメンバーは今後、この文化やコアバリューを他のメンバーに伝えていくハブの役割を果たして行くことになるからです。

しかしメンバーが少ない中でも、ただでさえめまぐるしく状況が変化する初期のスタートアップの中では綿密なコミュニケーションの努力を怠っていると文化やコアバリューへの認識は容易に分岐していきます(体験談です)。

それぞれが大きな責任を持ち、かなりの量と質の意思決定を繰り返していると、大きなパラダイムシフトが頻繁に発生します。怖いのはそれが無意識化で進行するということです。

なので、社内の文化やコアバリューを擦り合わせて再定義する作業は、継続的にしていかないといけないのだと思います。

スタートアップ初期の社内文化の在り方

前述の通り、文化やコアバリューの形骸化は時間や規模に伴って大なれ小なれ必ず進行してしまいます。

しかし、堅牢な組織を保ち続けるために、これに抗う最大限の努力は継続的に行うべきだと考えています。

特に初期スタートアップに関しては以下の2つを心がけることが有効であると感じました。

最小人数で定義して共有には全体で取り組む

文化やコアバリューを定義する初期の段階で決めるための話です。

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Fablic CEOの堀井さん が会社の納会にお話をしに来てくださった時に、

社内文化やコアバリューは社長の独断で定義していい、そしてそれをより多くのメンバーに(初期メンバーは特に)より深く浸透させることに対してのリソースは惜しまず割くべき(コアバリュー合宿など)

とおっしゃっていました(堀井さんはこの記事でも企業文化やコアバリューの大切さについて触れています)。

正直、この社内文化やコアバリューに関しては正解が存在しないと考えています。そんな抽象的な議論に多くの人数が関わると船頭多くして船山に上ってしまい、徒らに時間が過ぎていってしまいます。

それに加えて、お互いの主張が交錯して、最終的な成果物がそれぞれを折衷した何ともいえないものになってしまうというケースも往々にしてあります。

なので、定義は最小人数(できれば社長が1人で)して、他のメンバーはそれを理解するための施作・努力を継続的に行っていくというスタンスの方が効率よく軸を安定させられると思います。

(たまにこれらの定義を社外の人々に任せるケースを見ますが、とてもうーんという気持ちになります。)

共感レベルでの採用

(社内の文化やコアバリューの形骸化に)抗う最大限の努力は継続的に行うべき

と言及しましたが、やらなければいけないことが無限にあるスタートアップの中で、これにコストをかけすぎるのはとても痛手です。

なのでここの共有にコストがかかる人間は(初期は特に)採用の段階で弾くべきだと考えています。

事業の表面的なスピード感を重視するとスキルセットや経歴を最重要視しがちですが、僕は長期的な視点で見た時にこちらの方が圧倒的に重要だと思います。

これは僕が勝手に脳内でイメージしているオレオレ共感度グラフ的なものです。

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社長の脳みそを完全再現しているレベルでの共感は実質無理なので、初期のメンバーはできる限りピンクレベルであるべきであり、最低でも黄色レベルでないといけないと思います。

また組織が巨大化していった時に、全員の(特に責任を持っている人々の)共感レベルがどれくらいのレベルで保てるかというのが、堅牢な組織作りの大きな指標になると考えています。

社内文化に対する現在の僕なりの結論のまとめ

・文化やコアバリューの形骸化は時間や規模に伴って大なれ小なれ必ず進行する

・しかし、これは組織の脆弱化に繋がるため、抗うための最大限の努力は継続的に行うべき

・社内の文化やコアバリューを擦り合わせて再定義する作業は継続的にしていかないといけない

・初期スタートアップでは『最小人数での定義』と『共感レベルでの採用』が有効である

終わりに

感想

最後まで読んでいただきありがとうございました。正直この3ヶ月間においては日本トップクラスで労力を組織への考察に割いたと思います。

かなりストレスフルでしたが、その過程で働くということへのマインドもかなり研ぎ澄まされたのでかなりいい経験になったと思います。

こんなぺーぺーの悩みを真剣に聞き、相談に乗ってくださった業界の先輩の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

特に納会に来てくださった堀井さんの他に、組織についてたくさんのFBをくださった DeNAの千條さん、eurakaのkaneshinさん、Mercariのosamingoさんには感謝してもしきれません。

今後もエンジニアとしての力量を磨きつつ、考察を続けていこうと思います。